「この室の照明は入力必要?」モデル建物法の照明評価対象室を用途別に徹底解説

照明の評価対象室
「この室の照明は入力が必要?」——非住宅建築物の省エネ計算(モデル建物法)でよく起きる疑問です。
入力漏れがあると審査機関から差し戻しになり着工スケジュールが遅れ、逆に不要な室まで入力すると工数が増えるだけとなります。
この記事では、モデル建物法(通常版)における照明設備の評価対象室を、全26モデルの一覧表・制御削減係数・現場Q&Aとともに解説します。
目次

1. モデル建物法における照明設備の基本的な考え方

モデル建物法では、建物全室の照明を入力する必要はありません。選択した「モデル建物(用途)」ごとに定められた「主たる室用途」の室だけが入力対象です。それ以外の室は、たとえ照明が設置されていても入力不要です。

これはモデル建物法の大きな特徴で、全室を入力する標準入力法と比べて作業量が大幅に少なくなる理由のひとつです。

📌 モデル建物法の照明評価 3つの基本ルール
  • 入力対象は「モデル建物ごとに定められた主たる室用途」のみ
  • 廊下・トイレ・機械室・倉庫(工場モデルを除く)等は入力不要
  • 室用途の判断は「図面の室名」だけでなく「標準室使用条件」と照合して行う
⚠️ 室名だけで判断しないこと!

図面に「会議室」と書かれていても、実態が事務室に近い使われ方をするなら「事務室」として扱う可能性があります。省エネルギー基準で想定している各室用途の標準室使用条件と照らし合わせて判断し、迷う場合は事前に省エネ適判機関へ確認することを推奨します。

2. 用途別・照明の評価対象室 完全一覧(26モデル)

以下は、モデル建物法 入力マニュアル Ver.3.9(2025年10月版)の表5-1-1をもとにまとめた、全26モデル建物の照明入力対象室一覧です。

モデル建物入力対象室①
(主室)
入力対象室②入力対象室③
事務所モデル事務室
ビジネスホテルモデル客室 ※1ロビーレストラン
シティホテルモデル客室 ※1ロビー宴会場
総合病院モデル病室 ※1診察室待合室
クリニックモデル診察室待合室
福祉施設モデル個室 ※1診察室ロビー
大規模物販モデル売場
小規模物販モデル売場
学校モデル教室 ※2事務室・職員室ロビー
幼稚園モデル教室 ※2事務室・職員室ロビー
大学モデル教室 ※2事務室・研究室ロビー
講堂モデルアリーナロビー
飲食店モデル客席
集会所(アスレチック場)運動室ロビー
集会所(体育館)アリーナロビー
集会所(公衆浴場)浴室ロビー
集会所(映画館)客席ロビー
集会所(図書館)図書室ロビー
集会所(博物館)展示室ロビー
集会所(劇場)客席ロビー
集会所(カラオケボックス)ボックス
集会所(ボーリング場)ホール
集会所(ぱちんこ屋)ホール
集会所(競馬場・競輪場)客席ロビー
集会所(社寺)本殿ロビー
工場モデル倉庫屋外駐車場・駐輪場
注番号内容
※1ホテル・病院・福祉施設の客室・病室・個室については、浴室(ユニットバス)・トイレ・クローゼット内の照明器具は入力省略可。省略する場合は、その面積を様式E③欄の床面積からも除外すること。
※2電子計算機器演習室・実験室・実習室は「教室」とみなさない。これらの室の照明器具は入力不要。

3. 評価対象となる照明設備 / 対象外の照明設備

評価対象室であっても、すべての照明器具が入力対象になるわけではありません。評価対象とする照明設備、対象外の照明設備が以下のとおり定められています。

✅ 評価対象となる照明設備(入力する)

  • 作業・活動に必要な照明として、屋内または屋外(屋外駐車場・ピロティ等、照らす範囲が明確な場合)に設けられたもの
  • アンビエント照明と一体で計画され、設計図書上に配置・仕様が記載されたタスク照明
  • 明視性確保が主な役割だが、他の役割も兼ねる照明(例:階段通路誘導灯)

❌ 評価対象外の照明設備(入力しない)

  • 避難用・救命用等の特殊な照明(航空障害灯・ヘリポート灯火・進入口赤色灯等)
  • 安全性確保のための照明(誘導灯・非常時のみ点灯する非常灯等)
  • コンセント接続で設計図書に記載がないタスク照明(デスクスタンド等)
  • 高度な機能・目的を有する照明(手術室の無影灯等)
  • 常時点灯されない照明(年間点灯時間50時間程度以下が目安。設備シャフト等)
  • 演出用カラー照明(ショールーム展示照明・舞台・美術館の演出照明・広告灯等)
⚠️ 「設計図書への記載」が分岐点

タスク照明は「設計図書に記載があるかどうか」が評価対象かどうかの重要な判断基準です。コンセント接続で図面に記載のないものは対象外ですが、アンビエント照明と一体計画されて図面に記載があれば対象となります。

4. 照明制御(在室・明るさ・タイムスケジュール)の削減係数

照明設備に自動制御が設置されている場合、削減係数を乗じてエネルギー消費量を低減できます。制御の種類と削減係数は以下のとおりです。制御を適切に入力することで、BEI値の改善につながります。

⑧ 在室検知制御

人感センサ等で在・不在を感知し、不在時に消灯または減光する自動制御。
※手動スイッチ・カード式ルームキーによる制御は対象外。

有無適用条件(いずれかに該当すること)削減係数
A1)連続調光タイプの人感センサによる下限調光または点滅方式
A2)熱線式自動スイッチ・点滅タイプ人感センサによる点滅方式
A3)段調光タイプ人感センサによる減光方式
0.95
上記以外1.00

⑨ 明るさ検知制御

明るさセンサで室内の照度を感知し、設定照度に合わせて自動調光する制御。

有無適用条件(いずれかに該当すること)削減係数
B1)連続調光タイプの明るさセンサによる調光方式
B2)明るさセンサ+自動制御ブラインド併用の調光方式
B3)連続調光タイプ明るさセンサによる点滅方式
0.90
上記以外1.00

⑩ タイムスケジュール制御

照明制御盤等で設定された時刻に点滅・減光する自動制御。手動スイッチ操作は対象外。

有無適用条件(いずれかに該当すること)削減係数
C1)予め設定された時間に応じて照明器具を減光する方式
C2)予め設定された時間に応じて照明器具を点滅する方式
0.95
上記以外1.00
💡 削減係数の活用ポイント

在室検知(0.95)+明るさ検知(0.90)+タイムスケジュール(0.95)を組み合わせた場合、照明のエネルギー消費量に対して最大で 0.95 × 0.90 × 0.95 ≒ 0.81(約19%削減)の効果が期待できます。BEI値が基準にギリギリ届かないケースでは、制御の追加検討が有効な選択肢になります。

5. 現場でよくある疑問Q&A

  • 廊下・トイレ・倉庫の照明は入力が必要ですか?
原則として不要です。表5-1-1に列挙されていない室用途(廊下・トイレ・更衣室・機械室・倉庫など)は入力対象外です。ただし工場モデルのみ例外で、「倉庫」と「屋外駐車場・駐輪場」が評価対象室となります。
  • ホテルの客室でユニットバス・トイレ内の照明はどう扱いますか?
入力省略が可能です(※1)。ホテル・病院・福祉施設の客室・病室・個室については、浴室(ユニットバス)・トイレ・クローゼット内の照明器具は入力省略できます。省略した場合は、その部分の床面積も様式E③欄の床面積から除外することを忘れずに。
  • 1つの室に複数種類の照明器具がある場合はどう入力しますか?
照明器具の種類ごとに行を分けて入力します。たとえば事務室Aに器具Aが50台・器具Bが4台ある場合、様式Eに2行で入力します。室名称・室用途・床面積は同じ値を2行に記入します。
  • 複数用途が混在するビル(1階:物販、2〜5階:事務所)はどう対応しますか?
用途ごとに別々のモデル建物で計算し、最終的に複数用途集計を行います。物販部分は「大規模物販モデル or 小規模物販モデル」で売場のみ、事務所部分は「事務所モデル」で事務室のみ、それぞれ照明設備を入力します。
  • BEI値が基準を超えてしまった。照明設備の改善で対応できますか?
可能なケースがあります。まず照明器具の消費電力(W/台)の見直し、次に在室検知・明るさ検知・タイムスケジュール制御の追加を検討します。照明のBEI寄与分が大きい用途(事務所・物販・学校等)では、制御の追加が有効な場合があります。ただし、空調・換気設備の寄与の方が大きいケースもあるため、設備全体のバランスを確認することが重要です。

6. 省エネ計算の代行依頼という選択肢

2025年4月の全面義務化以降、すべての非住宅建築物(一部例外を除く)で省エネ計算が必要になりました。
照明設備の評価対象室の判断ひとつとっても、用途・モデルの種類・個別の注意点など確認事項は少なくありません。

建設会社・ゼネコンでは、確認申請のスケジュール管理と並行して省エネ計算を進めることが負担になるケースが多くあります。特に以下のような状況では、代行依頼を検討する価値があります。

  • 着工21日前の期限が迫っていて社内リソースが不足している
  • 複数用途混在・特殊用途で評価対象室の判断に迷っている
  • 設計変更が頻繁に発生し、その都度再計算が必要な物件
  • BEI値が基準を超えており、改善策の検討も含めて相談したい

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7. まとめ

モデル建物法(通常版)における照明設備の評価対象室について、重要ポイントを整理します。

  • 入力が必要なのは「モデル建物ごとに定められた主たる室用途」の室のみ(全26モデル一覧参照)
  • 廊下・トイレ・機械室などは原則入力不要
  • ホテル・病院等のユニットバス・トイレ・クローゼット内照明は省略可(床面積も連動して除外)
  • 学校の電子計算機器演習室・実験室・実習室は「教室」に含まれず入力不要
  • 工場モデルのみ「倉庫」と「屋外駐車場・駐輪場」が照明評価対象室
  • 在室検知(0.95)・明るさ検知(0.90)・タイムスケジュール(0.95)の制御入力でBEI値改善が可能
  • 室用途の判断は図面の室名だけでなく標準室使用条件と照らし合わせて行う

判断に迷う場面や、省エネ計算全体を効率よく進めたい場合は、ぜひ建築省エネ計算Labにご相談ください。

【参考資料】
・エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)モデル建物法 入力マニュアル Ver.3.9(2025年10月) 国土交通省国土技術政策総合研究所 / 国立研究開発法人建築研究所
・建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法) 国土交通省

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